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キュウリは、家庭菜園でも人気の野菜です。
実際には、家庭だけでなくプロの農家が栽培することも多く、
年中スーパーに並んでいることから、
ハウスなども利用して冬にも栽培されていることが分かります。
そんなキュウリですが、路地栽培でもハウス栽培でも、
アンモニアガスによる障害を起こすことがあります。
アンモニアガス障害は、なぜ起こるのでしょうか。
[キュウリ アンモニアガス障害]
■主な症状
・葉脈間の黄化(白化)
キュウリの栽培中にアンモニアガス障害が起こった時、
まず出る症状が葉の黄化です。
他の生理障害などでも、葉の黄化はよく見られる症状ですが、
アンモニアガス障害の場合は、葉脈間のみが黄化します。
黄化は葉の縁から起こることもあれば、
葉の中心に近い部分から起こることもあり、様々です。
黄化した部分は、時間が経過すると色がやや濃くなり、
薄い茶色にみえることもあります。
反対に、黄化した部分が白っぽくなる、白化が目立つ場合もあります。
アンモニア同様、栽培中に起こる可能性のあるガス障害の中に、
亜硝酸ガス障害もあります。
どちらも似たような症状が出ますが、
アンモニアガス障害の方が、黄化した部分の色が黄色っぽくなります。
亜硝酸ガス障害の方が白化が激しい点などから、見分けることができます。
また、アンモニアガス障害は、
日当たりの良い場所の葉に症状が大きく出やすいのも特徴です。
同じハウス内でも、日当たりの具合で症状の出方が変わるのも、
見分けるポイントです。
■主な原因
・アンモニア態チッソと石灰の接触
アンモニアガス障害が起こるのは、そもそもアンモニアが発生しているためです。
多量のアンモニアが発生することで、葉の気孔からアンモニアが植物内に入り込み、
気孔周辺の組織を傷めることによって、黄化や白化といった症状が出ます。
キュウリ栽培に限らず、アンモニアガスが発生する可能性が高いのが、
土作りの段階での肥料と石灰を加えた時です。
栽培するエリアの土作りを行う時、元肥となる肥料や酸度の調整や、
カルシウム補給のための石灰が加えられることが多いです。
この時、肥料にアンモニア態チッソが含まれていると、
石灰のようなアルカリ性資材と混ざった時に反応し、アンモニアガスが発生します。
このアンモニアガスが残った状態でキュウリを栽培すると、
アンモニアガス障害が起こります。
・有機物の多量施用
アンモニアガスが発生するのは、
アンモニア態チッソとアルカリ性資材が反応した時だけではありません。
もう1つ多い原因が、多量の有機物です。
土作りの時に有機物を入れることはよくあります。
有機物を入れても、特に問題が起こらないことも多いです。
けれど、有機物が一気に分解されると、多量のアンモニアガスが発生します。
ゆっくり分解されれば問題ありませんが、
一度に多量のガスが発生すると、どうしても障害が起こりやすくなります。
アンモニアガスの発生原因は、多量の有機物を土に混ぜ込んだ時はもちろんですが、
気温上昇によって分解が加速した時にも、発生が増えます。
・アルカリ性土壌
アンモニアガス障害が起こったハウス内に付着していた結露水を調べてみると、
アルカリ性になっていることが多いようです。
蒸散された水分がアルカリ性ということは、
土もアルカリ性に偏っている可能性が高いです。
キュウリは、中性~弱酸性くらいが栽培しやすい野菜です。
土がアルカリ性になっていると、アンモニアガス障害だけでなく、
様々な不調を起こす可能性が出てきます。
■対策
・アルカリ資材投入のタイミングと量
土作りの際、肥料と石灰を加えるのは、悪いことではありません。
けれど、一度に混和すると、どうしてもアンモニアガスが発生しやすくなります。
一番良いのは、土を耕した時に、まず肥料や有機物を混ぜます。
その後、すぐに石灰を混ぜずに、1週間~2週間ほど置いてから、
石灰を加えて土を混ぜます。
こうすることで、直接的に肥料と石灰が反応することを、避けられます。
・有機物の量
良い状態の土を作るために、有機物を入れることはよくあります。
ただ、一度にあまりにも多量の有機物を加えてしまうと、
アンモニアガス障害などが起こり、栽培初期から不調が出る原因となります。
栽培するエリアには、適量の有機物を加えるようにしましょう。
もし土作りのために、適量以上の有機物を入れたい場合は、
通常よりも早い段階から土作りのために混ぜておくか、
その年の栽培は見送った方が良いでしょう。
・ハウスの換気
キュウリは年中栽培されているため、ハウス栽培されることも多いです。
ハウスのように屋根や壁のある状態だと、アンモニアガスが発生した時に抜けず、
ハウス内のアンモニアガスの濃度が高くなります。
ハウス栽培が用いられるのは、気温がまだ低い時期であることも多いですが、
適度な換気は必要です。
気温が下がりすぎないように調整し、換気をしてガスを逃がすようにします。
また、春から初夏、秋くらいのように、気温があまり安定しない時期は、
天気によって思わぬ気温上昇が起こります。
気温が上がれば、急激な有機物分解によって、アンモニアガスが多く発生するので、
温度管理にも注意が必要です。
・マルチ栽培でも換気を
ビニールマルチを利用した栽培でも、
アンモニアガスの発生による障害が起こりやすくなります。
アンモニアガスは、土の中の有機物などから発生します。
そのため、ビニールマルチが土を覆っているマルチ栽培では、
アンモニアガスがマルチの下にたまりやすくなります。
アンモニアガスが気になる場合は、マルチをした後も、
片側だけはがしてめくり、換気を行います。
これだけでも、かなりガスが抜けます。
■判断基準
他の生理障害や病気でも、葉の黄化は起こります。
アンモニアガス障害の場合、葉の裏側にある気孔に注目しましょう。
気孔から入ったガスが原因で、気孔の周辺の組織を傷めるため、
気孔周辺が黄化し、葉脈は残した状態になるのが特徴です。
■参考
・キュウリ 種からの育て方
・キュウリ苗 枯れる
・キュウリ 地植えの育て方
・キュウリ プランターの育て方